Yumiko Tanaka Photography 

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写真集の印刷に関する話

写真集が印刷される様子(凸版印刷にて)

 写真集『大切ないつもの暮らし』が出版されました。実際にこの本を作って、改めて写真集は多くの人の力を借りて作られているのだと痛感致しました。

 自宅のインクジェットプリンターでもかなり綺麗に印刷されるようになってきたので、それと同様に簡単に印刷できるものなのかと安易に考えていました。しかし写真集はノウハウと技術がかなり必要だという事を知りました。確かに写真用紙ではない紙に印刷するのですから当然なのかもしれませんが。またコストに関しても、自宅のインクジェットプリンターで印刷する場合も、インクや写真用紙はかなりの高価ですので、それを思えば日本の書店に出回っている写真集がいかに安価で、高品質を保っているかということを再認識しました。そしてそれは出版社、印刷会社、作家達の、高品質の写真集を安価で提供したいという気持ちの現れだったという事を初めて知りました。

 今回は、凸版印刷さんのオフセット印刷で印刷して頂きました。オフセット印刷とは、まず版(アルミ)を作り(刷版)、その版にインクを付け中間転写体(ブランケット)に転写した後、紙に印刷する印刷方式です。私の写真集はカラーなので、それぞれ4色(墨、藍、赤、黄)の版が必要でした。これが印刷機で印刷する場合に使用される色モード、C.M.Y.K (シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)にあたります。パソコン上に表示する色モードは、R.G.B(レッド、グリーン、ブルー)です。従って、まずR.G.BのイメージデータをC.M.Y.Kに変換し、版を作ることになります。これがとても難しい作業になります。色を変換した場合、全く同じ状態で変換されません。色、画質等が違ってきますので、これを印刷会社の方は補正し、4色の版を作成します。その版も自動的に色配分が決まるわけではなく、どの色をどのぐらいの濃淡で出すかを写真一枚一枚調整していくのです。その調整が微妙に変わるだけで、色の発色、明るさ、コントラスト等が全く違ってきます。これらの作業は編集会議で、編集者である冬青社の高橋国博社長、印刷の技術責任者である凸版印刷の杉山幸次課長と営業の猪野直貴さん、ブックデザインを担当されるデザイナーの石山さつきさんと私で編集会議を開き、写真一枚ずつ色校正を行いました。その後、凸版印刷のオペレータの方がそれをデータに反映し版を作られました。これに、作家の作品にあった用紙、インクを選びます。

 実際に印刷機で印刷する際にも、刷出しを見て数センチ単位で各色を調整する事を数回繰り返し、最終的な本番印刷へと進みます。私も冬青社の高橋社長とともに凸版印刷さんに出向き、印刷立ち会いをさせて頂きました。刷出しを見ながら高橋社長がチェックし各色のインクの量を調整し、オペレータの方に指示をすると、次に出来てくる刷出しは更に良くなりました。これを数回繰り返しこれで良しとなったら、最終的に作家である私がその刷出しにサインを行い、その刷出しを基準にして実際の印刷に入ります。そうして印刷された印刷物の色ムラ等を厳しくチェックし、合格したものを写真集として製本することになります。

 これからは電子書籍の普及に伴って、紙の写真集は無くなっていくのかもしれませんが、その前にこの写真集を出せたことに、とても感謝しています。

 力を貸して下さった高橋社長、杉山さん、猪野さん、石山さん、本当に有り難うございました。もちろんこれらの方々以外の方々にも、お力を賜りました。写真の基礎と面白さを教えて頂いた比嘉良治さん、シリーズをまとめるにあたりご指導頂いた普後均さん、写真集の写真セレクトでご尽力頂いた北井一夫さん、あとがきの英訳をして下さった翻訳家の川田尚人さん、略歴の英訳で助力頂いたダン・アビーさん、心から感謝申し上げます。

 こうして生まれたこの写真集『大切ないつもの暮らし』が、多くの方々の手元に届くことを心から祈っています。

田中由美子  


正面にあるものが基準になる刷出しです。印刷されたものを一枚ずつ基準に合っているかチェックしていきます。                                                 


左から、凸版印刷の杉山幸次さん、凸版印刷の
猪野直貴さん、デザイナーの石山さつきさん、
私、冬青社の高橋国博社長